平成仮面ライダーシリーズから学ぶ販売戦略と長期的なプロモーションの考え方
Publish2015/11/10(火)
今更ですけど、僕は仮面ライダーが大好きです。
これまで何回もこのブログでも書いてるし、会う人会う人に仮面ライダーのことをしゃべり続けているのでもうお腹いっぱいかもしれませんが、今日は仮面ライダーの戦略とか中長期プランを自分なりに考察してみようと思います。
話せば長くなるので、初心者でもわかるような内容で以下のテーマで書きます。
- 仮面ライダーの変身ベルトのおもちゃを売るための戦略について
- 仮面ライダーディケイドによって、破壊された世界と新しい価値観
- デンライナーと仮面ライダー電王のイマジンという飛び道具が生み出したもの
- 革新を続ける発想の源泉はなんだろう
- これから先の仮面ライダーについて
仮面ライダーの変身ベルトのおもちゃを売るための戦略について
まず入り口ですごくわかりやすいところなんですが、玩具の変身ベルトを売るために仮面ライダーの関係者がどのようなことをしていたのかについて。
仮面ライダーという作品を語る上で外せないのが、「変身ベルト」。
仮面ライダーの醍醐味ともいえる変身ポーズをカッコよく決めるための大切な要素です。
作品ごとに特徴はあり、中には響鬼さんのようにベルトじゃないパターンもありますが、長らく人気商品として君臨していたのが変身ベルトです。
単価もそれなりに高いので、子供が普段気軽に買えるものではなく、クリスマスプレゼントや誕生日プレゼントとして人気があります。
ちょっと話をそらしますが、この子供が自分で気軽に買えない価格帯に設定している点も見逃せないポイントです。
子供が自分で買えないので、親や祖父母に買ってもらうわけです。
親や祖父母は自分自身は全然興味なくても子供や孫の笑顔を見るために買い与えたりするんですよね。
このプレゼントものとしての立ち位置っていうのはすごくいい立ち位置だと思っています。
人にプレゼントするものの場合「多少値がはっても」いいものを贈ろうと思うのが人の心理だと思います。
しかも、その相手が自分が大好きで仕方ない子供や孫であれば余計に、普段だったら買わないものでも買ってしまいますよね。
この辺の感情を上手く使っているあたりはすごくいい狙いをしていると思います。
話を戻します。
さて、そのベルトですが今は少し状況が違いますが、少し前まで「買いたいけど買えない」という状況が続いてました。
これは単純に初回出荷の量を調整して、欲しい人に行き渡らないようにすることで「プレミア感」を出すことができるというのが狙いだと思います。
実際、過去ライダーベルトは入荷時に抽選で購入する権利を得るというような売り方をあちこちでされていました。
買いたくても買えない状況をコントロールするというのは大変むずかしいですが、ライダーベルトの販売に関してはすごく上手いなと思っています。
ただ、何年も同じようなことをしたので、最近は飽きられて方針転換をせざるを得ませんが。
あと、変身ベルトの売り方で面白いのはベルトと連動する変身アイテムの売り方です。
変身アイテムが売れるからベルトが売れるというのもありますし、ベルトが売れるから変身アイテムが売れるということもあり、相乗効果があります。
よく売れた変身アイテムといえば、仮面ライダーオーズのオーメダルです。
このメダルがガチャガチャで買えたり、店頭でパッケージ売りがされていたりと、売り方も特徴がありました。
また、「揃える・集める」という楽しさもあって、めちゃくちゃ売れていました。
一つの商品だけ売るのではなく、関連商品も売るというところは、マーケティングの世界でいうところのクロスセルってやつですよ。
全部集めたくなる心理とか、レアなものをゲットしたくなる心理とか、人の心のポイントをついてくる売り方は本当に上手いなと思います。
同時にえげつないなとも思いますが。
脱線がてらもう少し話を脱線させますが、ライダーベルトはクリスマスプレゼントとして人気があると言いましたが、クリスマスといえばケーキもあるわけです。
全国のケーキ屋さんにとって一番忙しい季節でもあるわけですが、仮面ライダー(だけじゃないけど)もクリスマスケーキ商戦に乗っかっています。
それが「キャラデコ」。
イオンとかに行くとあるので、何かのついでで行った時に見てみると面白いですが、このキャラデコは変わった商品で、購入すると仮面ライダー(だけじゃないけど)と電話をすることができるという特典があります。
もちろん音声ガイダンスなんですが、子供はそんなことを知らないので「仮面ライダーとお話ができる!」とテンションが上がりクリスマスケーキまで買わせようと買ってもらおうとあの手この手で少年たちの心を引っ張っていきます。
クリスマスプレゼントやクリスマスケーキといったイベントごとにしっかり乗ってくるあたりはすごく参考になります。
だいぶ話が長くなりましたが、仮面ライダーの変身ベルトは「売る側の立場」で考えると非常にたくさんの気付きがあり、販売戦略を考える時にすごく参考になります。
仮面ライダーディケイドによって、破壊された世界と新しい価値観
仮面ライダーを語る上で僕には外せないライダーがいます。
それが仮面ライダーディケイド。
名前の通り破壊を冠したライダーですが、このライダーの存在によって平成ライダーシリーズは新しい局面を迎えることになります。
ディケイド登場以前の平成ライダーシリーズの世界は、多少の連動はあっても基本的には作品は個別で完結しています。
アギトの世界はクウガの世界のその後といいう設定で、未確認や4号という名前は出てきますが、直接クウガが出ることもなかったです。
しかし、平成ライダーシリーズ10作記念作品のディケイドによって、世界が繋がってしまったわけです。
ディケイドのお話は、自分の存在する場所を求めて世界を旅するというもので、過去の平成ライダーシリーズや昭和ライダーの世界を旅します。
その過程で、原作ではないパラレルワールドがいくつも発生したり、仮面ライダー大戦というシリーズものの映画が誕生したりしました。
また話をずらしますが、仮面ライダー映画は毎年何作も出るほどハズレがない人気作品です。
というのも、仮面ライダー大戦などが特にそうですが、子供世代だけではなく、親世代を巻き込んで観客動員を伸ばしている節があります。
子供の頃に見ていた仮面ライダーが出る映画なので、おっさん世代も楽しく映画を見ることができます。
また、ライダー映画は基本僕みたいな大きなお友達以外は複数人で劇場に行きます。
親子で行くと3から4人は一緒に映画を見るわけで、不振の映画界の中では客数を伸ばしやすいという特徴があります。
そのため、映画館側も力を入れる形になり、チケットの予約販売で限定おもちゃがゲットできたりもします。
(映画前売り券で限定商品が手に入るのはポケモンや妖怪ウォッチなどの他の子供向けコンテンツでも同様です。)
もう一つ話をずらすと、おっさん世代だけではなくお母さん世代にもきちんと引っかかる仕組みを作っています。
そう、イケメン俳優で。
仮面ライダー出身のイケメン俳優といえば、先日仮面ライダーが黒歴史ではないと公言したオダギリジョーさんをはじめ、要潤さん、佐藤健さん、水嶋ヒロさん、福士蒼汰さんなど、今の時代を引っ張っているイケメン俳優が目白押しです。
仮面ライダーの出演から人気俳優へという道は既に確立された感すらあり、今後人気が出るイケメン俳優をチェックするという青田買い的な側面でもお母さんがたに人気もあります。
だいぶ話がそれた(そらしたんですけど)ので戻します。
そんなディケイドですが、おもちゃや映画の販売だけではなく、中長期的な計画の意味でも重要な役割を果たしています。
それは「最終回の時期をずらした」という役割です。
実はこの仮面ライダーディケイドは、放送期間が通常の平成ライダーの1年とことなり、半年しかありません。
そのため、いつもだと2月くらいに最終回を迎えるライダー作品の最終回のタイミングを9月にずらすことになったわけです。
以降のライダーは通常の1年スパンになるので、最終回の時期はずれたままです。
この最終回の時期をずらすというのは非常に重要な意味があります。
まずひとつは、仮面ライダーが放送されるスーパーヒーロータイムの時間帯での役割です。
スーパーヒーロータイムはスーパー戦隊と仮面ライダーのセットでの名称です。
スーパー戦隊シリーズは、最終回時期が2月くらいになるので、仮面ライダーも2月だと、そのタイミングで「スーパーヒーロータイムを見ることをやめる」人が出てくるわけです。
メインの視聴者層は子供なので、「もう仮面ライダーとかいいわ」と大人ぶりたくなるもの。
最終回のタイミングで終わってしまうということになると、新しいお友達が見てくれるとはいえ、出生率のことも考えるとライダーとスーパー戦隊の視聴者数は少なくなっていくだけです。
いくつになっても見てもらえるようになる仕掛けをつくるには、「これまで見てたし最後まで見よう」という惰性が大切です。
半年間ずらすことで、視聴者離れを防ぐ意味があります。
これはライダーにおける中長期的なプロモーション戦略だと思います。
ちなみに、プリキュアは男児ではなく女児向けということもあり、以前はひとくくりでニチアサ枠という感じでしたが、今は別物として分離しています。
(プリキュアの戦略も面白いのでまた別の機会に書きます)
もう一つの大きな理由はこれまたクリスマス商戦が絡んでいます。
時期を考えると面白いのですが、9月に最終回を迎えると10月には新しいライダーシリーズが始まっています。
そして、結構話題になってみる人も増えており、一番ライダーの年間通して話が盛り上がってくる時期にもなります。
新しいライダーにも慣れてきて、ダサいと思っていたライダーが以外とかっこいいんじゃないかと思う時期ですから。
そしてそのタイミングでクリスマスプレゼントの候補として「ライダーベルト」をはじめとしたグッズの販売攻勢に入るわけです。
2月終わりだと販売戦略的に案出しが難しいタイミングでも、新シリーズ公開後の少し落ち着いた時期からだと目新しさもあって購買意欲を刺激する戦略を取ることもできるので、売りやすいですよね。
このディケイドによってずらされた最終回の時期はものすごく大きな節目だったと思います。
これはその後のWやオーズのベルトがバカ売れした一つの要因だと考えています。
デンライナーと仮面ライダー電王のイマジンという飛び道具が生み出したもの
上記でも書きましたが、仮面ライダーシリーズにおいて劇場版が果たす役割は非常に大きいです。
次の年のライダーの顔見せや、懐かしの当時の俳優の出演など、話題を作る上で劇場版というのは大きな起爆剤な訳です。
でも、もともと繋がっていなかった作品をディケイドが繋げたとはいえ、まだまだ「設定上無理がある」のは当然です。
そこで登場するのが「デンライナー」と「イマジン」という飛び道具です。
デンライナーは時間や空間を移動することができる電車で、仮面ライダー電王のシリーズで活躍しました。
このデンライナーがその便利な特徴のため、「無理を通して道理を蹴っ飛ばす」ような存在になっています。
多少無理があっても「デンライナーに乗ってきたから」ということでどうにでもなるというかなりグレーな存在です。
また、仮面ライダーシリーズは出演俳優がその後人気俳優になることがほぼ決まっているような感じなので、劇場版で本人が出演できない(スケジュール調整的な意味で)こともよくあるわけです。
でもイマジン(モモタロス)がいれば大丈夫です。
モモタロスは最初の頃実体はなく人に憑依することでその存在をなしていたキャラですが、いつの間にか憑依する人がいなくても実体化することができるようになっていました。
これにより、本人出演が難しい場合の代役に最適で、プロの声優とスーツアクターによるクオリティの高い演技を最大限に活用することができるわけです。もともとデンライナーに乗っていたことも相まって、とりあえずモモタロス出しとけば大丈夫のような感じすらあります。
電王は作品自体も人気が爆発した素晴らしい作品ですが、何よりも大きな功績はデンライナーとイマジンの存在かなとも思います。
革新を続ける発想の源泉はなんだろう
仮面ライダーの人気を支える戦略の一つに毎年発表される新しいライダーのモチーフがあります。
来年のライダーはこんなやつってい予想やネタバレは毎年見ている僕らのような特撮ファンにはたまらないものがあって、毎年の風物詩でもあるわけです。
そこで毎回「こうきたか」と驚かされるんですよね。
例えばフォーゼの時は、初の学園もの、主人公が高校生、宇宙キターという特徴があって話題になりましたし、鎧武の時は「フルーツ」と「ダンス」「武将」というびっくり設定でした。
昨年のドライブは「ライダーなのにバイクじゃなく車」で「警察官」という感じでしたし、今年も「幽霊」「偉人」「主人公が初回で死亡」というぶっ飛びっぷりです。
毎年よくもこれだけ設定がぶっとんいるものだなと思うのと同時に、毎年の楽しみを作るアイデアがすごいなといつも感心しています。
仮面ライダーのすごいところは、この毎年出てくるぶっとんだアイデアもすごいところです。
人が考えもしかなったモチーフや話を考える企画力の高さには心からすごいと思うんです。
これから先の仮面ライダーについて
書き出したら止まらなくなって長文になりました。
今書いた部分以外にも細かい部分の設定やストーリーの伏線などと商品展開の連動があったりして、仮面ライダーの商品販売戦略はものすごいなといつも思うんです。
毎年戦略はアップデートされてて、時代にあった新しいやり方なども毎年のように登場するので、これからも目が離せません。
仮面ライダーのように人気コンテンツになっているものは、コンテンツ自体の魅力も大切ではありますが、「どう盛り上げるか」「どう楽しんでもらのか」といったユーザー視点での考え方を取り入れることが大切です。
しかも仮面ライダーのすごいところは、ユーザー視点で考えるだけではなく、コンテンツ配信側にもしっかり利益が出るように考えられたマネタイズの戦略やPR戦略なども参考になります。
売れているものの理由を探るというのは大切な視点だと思うので、これからも楽しみながら注意深く仮面ライダーを見ていこうと思います。