マンガ「食キング」で考える仕事のあり方と考え方
Publish2016/01/18(月)
年末からマンガアプリの「マンガZERO」で寝る前にマンガを読んでいるんですが、その中でとても面白いマンガに出会いました。
それが「食キング」なんですが、このマンガが非常に面白いのと同時に、仕事のあり方や考え方をとても考えさせられる内容なので、紹介がてら考えてみようと思います。
食キングのストーリー
まず、食キングがどういうストーリーなのかをざっくりと解説すると、函館五稜郭亭という名店の「伝説シェフ」としてその世界で有名な主人公「北方歳三」さんが、シェフではなく料理店の再建請負人という仕事をしているという設定から始まるストーリーです。
いわゆるグルメ漫画のはずですが、時折料理とは全く関係のない流れになったりすることもあり、展開がすごく面白い作品です。
察しがいい人はもう気付いたかもしれませんが、登場人物はなぜか歴史上の人物をもじった感じが多く、作者である土山しげるさんが歴史好きであることは疑いようはないかと思います。
ちなみに、続編の「極食キング」では北方さんと敵役の設定の織田さんと漫才コンビを結成するという謎の設定も登場したりして最高に面白い展開がある。
ぜひ読んでほしい名作だと思える作品です。
第1話で既に世界観ができている
ではここで第1話を紹介してどの辺が仕事と関係あることなのかを探っていこうと思います。
第1話の話の流れは以下のような感じです。
寂れた洋食屋が舞台。
この洋食屋は家賃を滞納するほど流行ってなくて、思いつきの新メニュー「ハヤシ・カツカレー」で逆転を狙うという浅はかな巻き返しを狙っている。
洋食屋さんには子供がいて、遠足で両親に作ってもらった弁当を捨てようとしたところ、北方さんが登場する。
子供に付き添ってなぜか家まで送る優しい北方さんが、お店の両親に事情を説明するが、なぜか料理がまずい話にシフトチェンジ。
即興で卵とじを作って子供に美味しいと言われてドヤ顔する北方さん。
そんな様子はスルーして、お客さんに新メニューを出すとなぜか完食されご満悦の店長の旦那さんは店を奥さんにまかせてパチンコに。
その様子を子供から聞いた北方さんが激怒。
その後新メニューがたくさん残されて失意に沈む旦那さん。
その理由を聞いて北方さんに再建を頼むことに。
北方さんが決めた修行の内容は給食で600人分のカレーを作ること。
旦那さんもくじけそうになるが、給食を食べて元気になる子供の笑顔を見て奮起する。
給食作りで培った経験をもとに作ったカツサンドが人気のお店になって再建は成功。
というのが第1話の概要です。
この「最初のいけてない状態」から「親族や身内が北方さんに依頼」して「北方さんにダメだし」されて北方さんと契約、その後北方さん考案の「修行(質問は禁止でなぜか目隠ししてサイドカーに乗せられ、修行の地へ移送されるオプション付き)」を行い、そして料理人としての心と技術を取り戻し、お店が復活するというのが定番の流れになるのですが、これは物語を通してあまり変わらない定番の流れになります。
ユーザー目線と仕事への取り組み方の話だったと思う
さて、この第1話でも既に面白いわけですが、中でも面白いのは
・なぜ最初の「ハヤシ・カツカレー」を食べたお客さんは完食したか
・ダメな店長のどこに北方さんは希望を見出して再建請負の仕事を受けることにしたのか
という点が素晴らしかったわけです。
この2点はユーザー目線と仕事への取り組み方の姿勢はどうあるべきかというすべての仕事に共通するテーマでした。
まず、なぜ最初の「ハヤシ・カツカレー」を食べたお客さんは完食したかですが、これは最初のお客さんが主婦の女性だったことと北方さんは分析しています。
主婦の女性のお客さんは自分で頼んだ料理は多少まずくても全部きちんと食べる人が多いらしく、その代わりその料理が美味しくなかったら2度とその店には来ないという特性があるということでした。
そして、その様子をきちんとシェフである自分が見ていないことで。「きちんと食べられた=美味しかった」と錯覚してしまうことで油断したことがダメになったポイントだと診断していました。
この作ったものを誰がどのようにどういう感じで食べたのかをユーザーの属性に合わせて分析し、その様子をしっかりと観察してデータとして残しておく点などはwebの運用にも通じる話です。
そして、ダメな店長のどこに北方さんは希望を見出して再建請負の仕事を受けることにしたのかという点がまた素晴らしかったんですが、北方さんが受けた理由は「キッチンが綺麗に掃除されていたから」です。
北方さん曰く「料理は後片付けまで終わってこそ完結するもの」らしく、作るだけではなく料理人であればキッチンと常清潔にすることができない料理人は料理人失格とまで言い切っています。
これは精神論のように思えますが、キッチンを綺麗にすることで、次に料理を食べてもらう人に全力で美味しい料理を出すための準備として非常に重要らしいです。
確かに衛生的でない環境で作られる料理より、清潔に保たれた環境で作られる料理が食べたいですし、そういう気持ちを持って料理を作ってくれる料理人さんに料理を食べたいと思うので、北方さんの言うとおりだなと思うんです。
一つの話でも2つの学ぶポイントがあるのは素晴らしいなと思いますね。
まとめのようでまとめないまとめ
食キングはこのように非常に面白くて考えさせられるマンガです。
北方さんのキャラが面白いというのもありますが、料理に対して真摯に取り組む姿勢とか、ホームページから再建請負の仕事を取っていたりとか、色々と考えさせられる内容がてんこ盛りです。続編の極食キングと合わせても相当ページ数があるので、しばらくの間楽しめるかと思います。
余談ですが、同じ作者の「食いしん坊」と「喧嘩ラーメン」も結構面白いですので、また気が向いたらそれらの作品についても書こうと思います。