サービス提供側の質のついて思うこと。
Publish2016/01/28(木)
Update2020/11/25(水)
昨日この記事「クルマ離れ…TBS安東弘樹アナウンサー連載コラム」を読んで思うことがあったので、今日はちょっとこの話から思ったことを書こうと思います。
ちなみに、この記事は自動車の話でしたが、自動車のことについて書く気はありません。
書きたいのは「ディーラーが車についての深い知識を保有しているべきではないか」という意味合いの部分についてです。
ディーラーがお客さんに望まれていることは何か
この記事を読んでいて、一番気になったのはディーラーに関するくだりの部分です。
著者の安東さんの言いたいことはすごくよくわかるんですよね。
自分が知りたい情報を聞いているのに、プロであるはずの立場の人から聞こえてくるのは素人レベルの返答だったりしたら、かなりがっかりすると思うんです。
でも、これって少し考え直してみると面白くて、ディーラーに行った安東さんはディーラーのスタッフから「プロとしての見識」が提供されるものであると思い込んでいた部分はあるんじゃないかなと思うんです。
ディーラーはそういう場所ではないとかそういうことではなくて、思い込みで「こういうものだろう」という部分の前提があったからプロらしからぬ言動にがっかりしたわけです。
ここで言いたいのは、安東さんの思い込みがよくないということではなく、お客さんの側から見て「ディーラーのスタッフには車に関する知識が求められている」という部分です。
お客さんが望むものを提供するのが、サービス提供者がお客さんに与える価値だと思っているので、この前提を見逃しているディーラーのスタッフさんは機会損失をしていると思うんです。
問題はディーラーのスタッフにあるのか?
一連の出来事から、ディーラーのスタッフさんは確実に機会損失をしているというのは間違いないでしょう。
しかし、この機会損失の原因はスタッフさん本人だけに原因があるとは僕には思えません。
というのも、ディーラーのスタッフさんも会社に入って新人教育を受けているでしょうし、普段からサービス提供側として色々なお客さんに接しているはずなので、一人の問題ではなく会社としての取り組みの問題なんだと思うんです。
安東さんがおっしゃっている以下の言葉を引用します。
昔は、クルマ関係の会社に入るのは生粋のクルマ好き、という方だったのでしょうが、それこそ、バブル以降、就活のなかで、たまたま内定が出たのがクルマの販売会社、という方が増えた、という事かなと分析してみたりしています。
多分原因はこの辺にあると思います。
この場合、ディーラー側も「生粋のクルマ好き」ではない人たちも採用する必要があったはずです。
会社の規模や社会としての需要が増えてくると、「生粋のクルマ好き」の層だけでは立ち行かなるでしょう。
これは社会の変化でもあると思いますし、ある意味当然の流れだと思うんですよね。
問題は、その「生粋のクルマ好き」ではない層の人たちに車に関する知識をしっかりと習得させるという流れを会社側が作ってこなかったことが大きいんじゃないかなと思います。
Webの業界に置き換えてみても同様のことがいえるのではないか
ちょっと話が長くなってますが、実はここからが本題です。
この話を考えているときに思ったのが、まさに僕たちのいるWeb業界もそうなっているということです。
一昔前まで、Webの仕事をしている人は「Webが好きだからこの仕事をしている」という人が多かったように思います。
しかし、最近では企業の担当者さんとかでも、「人事異動で仕方なくこの部署に来ました」というような人も増えてきています。
そして、当然その人はWebのこともあまりよく知らないわけなんですよね。
でも、この場合その担当者さんからすると、会社の仕事の一環でたまたまWebと接触することになっただけなので、担当者さん本人の落ち度のようなものは一切ありません。
このことから思うのは、車しかりWebしかり、社会にとって広く広まってくると興味をあまり持っていない層でも、関わりのある立場になる場合があり、広まれば広まるほどその比率は上がり、いつしかその数は逆転するということです。
車業界がそうであるように、Web業界も今後もっとWebのことをよく知らない人が増えてきて、もっと先には「Webのことが好きで深い見識を持っている人」が少なくなってくるだろうと予想できます。
需要と供給とサービス提供側の意識の問題
社会の流れとしては上記で書いたようなことになりますが、実際の社会では「サービスを提供する側はプロだ」という意識が残っている状態になってくるかと思います。
安東さんの話に戻すと、ディーラーのスタッフは「車のプロ」だと思っているという部分ですね。
お客さん側から「プロとしての見識」を求められているということであれば、ディーラーのスタッフさんももっと勉強をする必要があると思いますし、Web業界の場合でもプロとしての仕事はどういうものかということを考えてサービスを提供する必要があると思うんです。
簡単に言うと「誰に何を求められてどんな価値を提供できるか」ですね。
ただし、これまでまるでディーラーという会社組織に問題があるように書いてましたけど、もう少し考えると違った側面ができてきます。
それはお客さん自身が「車にこだわりがない人の方が多くなっている」場合では、ディーラーとしては購入するお客さんと同じ視点を持ったスタッフさんがいた方が車を売りやすいということができくるという部分です。
この場合、ディーラーに求められるお客さんのニーズは「安くて簡単な車」になってきているはずなので、車の専門知識は不要と言わないまでも重要度はかなり下がってくると思います。
その場合であれば、車に関する知識は特に問題視しないということにもなるはずなので、企業の判断として多くのお客さんを相手にする場合の選択肢としては間違いではないわけですね。
やはり双方の視点からものを見ないと見えてこないものがあります。
件の安東さんは、それでも車が「命」を運ぶものである以上、採算を度外視してでも安全を優先させるべきではないかというふうに聞こえなくもないですね。
こう考えるとどちらが正しいとかではなくて、どのようにありたいかという部分になってくるかと思います。
話をまたWebに戻しますが、車の時と同様知らない人が増えてくると「安くて簡単なWeb」のニーズが高まります。
そっち方面で勝負するか、質の面で勝負するかはそれぞれの判断でしょうけど、「安くて簡単なWeb」はすでに各種サービスがたくさんあり、システムに人間が勝負するのは現実的ではないように思うんですよね。
僕個人としても、「安くて簡単なWeb」の方面で勝負するということではなく、「プロの視点でWebのことを相談できるパートナー」でありたいと思っています。
これは完全に個人の方向性の話ですね。
まとめと余談
つらつらと書いたのであまりまとまっていませんが、件の記事を読んで思ったのはこんな感じです。
しかしあれですね、安藤さんの文章はすごくわかりやすくて丁寧で素晴らしいなと思いました。
文章から伝わって来る知性的な感じとか誠実な感じとか、すごく読んでいてためになる文章でした。
こういう問題提議はやはり好きだなと思いますし、これをきっかけにいろいろな意見が出てきて世界がよい方向に進めばいいなと思います。