魚市場での経験
Publish2011/02/11(金)
今回は僕が以前働いていた魚市場での経験から考えたことを書いてみようと思います。
突然ですが質問です。魚好きですか?
僕は好きです。魚。
魚好き(主に食べる方)だったからということでもないんですが、一時期大阪の東部市場という天王寺の横にある市場で働いてました。
1年くらいしか働きませんでしたが、その時の経験がかなり貴重な経験だったので少し思い出話をしようと思います。
魚市場での働こうと思ったとこらへんの心境
まず最初に、なぜ市場で働こうと思ったのかなんですが、僕はその当時かなりダメ人間でして、夜遊びとお酒で廃人のような生活を送っていました。
そんな体たらくだったのですが、「このままじゃやばい」とさすがに思ったので、何かしようと職探しを始めました。
でも、本人的にダメ人間がいきなり働くというのも難しいのと、雇う側からしてもそんなダメ人間を雇ってくれるところも簡単には見つけられません。
そこで、その当時住んでいた寺田町の近所にあった東部市場であれば、学歴とか関係ないし、多分僕よりももっとダメ人間いるだろうという安直な考えで、とりあえず軽いノリで面接に行ったら即採用になりました。
これは後からわかったんですが、「こいつダメっぽいやつやな」と思われていたようですが、「まあ若いしなんとかなるやろ」というかなり大雑把な感じで決まったらしいです(笑)
そして、早速次の日の夜から市場での仕事が始まりました。
そこのお仕事の勤務時間が、AM0:00~AM9:00くらい(忙しい時はPM22:00~AM11:00とか)という時間帯で、まず勤務時間が深夜という一般の人の生活と真逆の生活になる訳です。
でも、そこはダメ人間。基本的な活動時間がその時間帯なので、なんなく順応できました。
市場での仕事内容
市場での仕事内容は、その働いていたお店が配送工場をしていたこともあり、最初の3時間くらいは市場ではなく配送工場で魚を仕分けるということをしていました。
工場内は温度が高いと魚が痛むので冷蔵庫になっています。
年がら年中冷蔵庫にこもる生活が始まりました。
最初はつらいなーと思っていましたが、人ってすごいもので結構慣れるんですよね。
慣れだすと、もっと楽にこの仕事を終わらせるにはどうしたらいいのかを考えるようになります。
冷蔵庫の中では、魚の入った発泡スチロールケースをばっこんばっこんかごに振り分けていく力作業&数を確認する検品作業をしていました。
主に力仕事がメインですが、少し頭を使うと効率よく仕事を終わらせる事ができるという仕事でもありました。
数が多いものだけ先にセットして振り分け、数が少ないものはルートで回って捌くなど、やり方によってはかなりスピードアップできます。
こういうところで何気に仕事の効率化をするためにはどうすればいいかとかを考えるようになったりするから不思議ですね。
ここでは他に、市場からこの工場への魚の運搬の為に2トントラックの運転やフォークリフトの運転などもしていました。
市場内は私有地になるのでフォークリフトを僕も運転してたんですが、あれも爪を突っ込む角度とかで安定性が増したり、少しだけ爪をパレットに合わせて押し込んだりといったうまくなってきたら細かい作業もできるようになるんですよね。
最初は慣れなくても、やり続けることでうまくなっていく感覚ってやっぱり楽しいと思うんです。
工場での振り分けが終わると、市場に戻り「でっち」という手押し車に魚を積み込み、市場内に止めてあるお客さんの車に魚を運ぶという仕事が続きます。
その合間に氷を何回も取りにいったり、-20℃の冷凍庫内で小1時間整理整頓をしたりとかもします。
その間は、基本休憩なしでひたすら歩くというかなり辛いお仕事でした。
当時は慣れていたのでそんなもんかなと思いましたが、今こうして思い返すととんでもなくハードな事してたなと思います。
この時間中はお客さんを待たせても迷惑がかかるので、より効率よく配達する為にルートや積み込む量、その後の行動なども常に考えて1歩だけでなく2歩先の事も考えて行動するということが必須でした。
基本的には体力メインのように思われがちですが(まあ体力ないとできないですけど…)、意外と頭を使って効率化する事が重要な仕事でした。
ここで得た「効率よく動く事の大切さ」と「自分でロジックを考えて実行する事の楽しさ」という経験は今の仕事をする上でも基本となる考え方なのでいい経験になりました。
ついでに体力も付きましたしね。
市場の仕事問題点と自己防衛
で、そんな仕事内容で市場でお仕事をしていたんですが、単純なようなこの仕事でも意外と覚える事はたくさんあるわけです。
体力と頭を使ってしないといけない仕事ですが、致命的な問題がありました。
それはその作業をする人がおっさんばっかりだったという事です。
その当時僕は22くらいだったんですが、周りからすると「お!若い兄ちゃんが入ってきたで!珍しいやん!」くらいの感じでした。
まわりは40後半から50後半の人が一番多くて、中には70近いおじいちゃんまでいました。
そんな力仕事をその年代の人でするのはしんどいので、必然的に「若い」という理由だけで力仕事を押し付けられてしまうのはけっこう大変な問題でした。
忙しくない時はいいんですが、忙しい時とかになぜかこっちの仕事が山盛りになってくるというのは凄いストレスです。
ちなみにその間、そのおじいちゃんは椅子に座ってお茶を飲んだりとのほほんとした感じだったのでかなりイラっとしていたのは内緒です。
そんなこともあって、作業を効率化しておかないと、とてもじゃないけど無理っていう状態がずーっと続きます。
それとその年代特有というか、おっさん特有の「いまどきの若いもんは」思想が蔓延しているので、ちょっとやそっとでは認めてもらえない感も凄かったです。
入った当初は仕方ないのでいいのですが、ある程度長くなってくると新人さんを教える機会も出てきて、その新人さんが50歳や60歳ってこともざらです。
一応仕事自体はこっちの方が長いので「ここはこうしたらいいですよ」と教えても「そんなんいわれんでもわかっとるわ」とか「ええねん。こうした方がええんやから」と聞く耳持たない人は本当に多かったです。
やはり長く生きるといらないプライドができてしまうんだなと、ここは反面教師としようと思いました。
自分が年をとっても「若いから」という理由だけで、その人のことを決め付けてしまわないようにしているのは、こういう経験があったからというのもあります。
中にはいいおっさんもいたのですが、基本的にそんな年齢で新しく市場に来る人というのは「ここしか来る所がなかった」人が多いんです。
会社をリストラされたとか、離婚をして家を追い出されたとか、なにかしらの理由付きの人が来るので本当に色々な人生の縮図の話を聞けたのはいい経験でした。
決め付けて話されるのは気分がよくありませんが、実際に年齢を重ねているだけあってその当時の僕では考えもしないようなことを経験として教えてもらったのは非常にいい経験だったと思います。
振り返るとある意味貴重な体験だった
こう思い出してみると大変な仕事ではありましたが、その対価として通常では聞けないような経験談や効率的に物事を行う考え方、そして体力がついて健康になったというのは大きなメリットでした。
もちろん市場なのでおいしいお魚がいただけたり、魚に関する知識が増えたのも個人的にはとてもいい経験でした。
人のいい面と悪い面を見ることができるのも、こういうところで殺伐とした雰囲気じゃないとわからないこともありますし、人生経験としては面白かったと思います。
一見単純作業だろうという思い込みや、しんどいことを続ける精神的なタフさみたいなところも鍛えられたので、ダメ人間が少しダメな一般人にまでなれたんじゃないかなとは思います。