関西と関東の違いをエスノグラフィーという視点から考えると相当面白い。
Publish2015/06/01(月)
先日テレビを見ていた時に興味深い話があったのでその事を書きます。
その興味深い話というのが「関西と関東の食パンの切り方の違い」というやつで、関西在住の僕からすると「なにそれ?」という、関東では食パンは8枚切りが主流という話でした。
エスノグラフィーとは?
まず本題に入る前に、「エスノグラフィー」の事を知らない人向けに解説します。
簡単にいうと、民族学的な視点で物事を調査する手法です。
今回はその手法をマーケティングに活用する形で考えてみようという訳です。
詳しくは以下引用。
元来は文化人類学、社会学の用語で、集団や社会の行動様式をフィールドワークによって調査・記録する手法およびその記録文書のことを「エスノグラフィー」(ethnography)といいます。 エスノ(ethno-)は「民族」を、グラフィー(-graphy)は「記述」を意味し、一般に「民族誌」と訳されます。 近年は商品開発やマーケティングに欠かせない調査手法として注目され、さらには人材育成やプロジェクトマネジメントなどの分野でも活用されるケースが増えています。
「誰を相手に何を売るのか?」という事を考える上で、その人の個人のバックグラウンドやビッグデータと同じく、その人が暮らしてきた環境の特性や特徴、文化的背景を調査し、考慮に入れたほうがより明確に計画を練ることができるわけです。
関西と関東のパンの切り方の違い
ではここからが本題。
僕は今大阪在住なので、パンは6枚もしくは5枚切りでスーパーに売っていることを当然だと思っているわけですが、どうも関東ではパンは8枚切りが主流のようです。
これを聞いたときに、「え?8枚?うすない?」と正直思いました。
関西で当然と思っている価値観が関東と異なるのはよくあることですが、食パンの切り方ですらそんな違いがあるんやねとふむふむと聞いてたんですが、この理由の考察が面白いものでした。
まず、なぜそのような違いがあるのかという理由の一つの説に朝食の生活習慣の違いによるものということがあるようです。
話は江戸時代の頃までさかのぼり、江戸では武士文化のため朝食はご飯を炊いて過ごしていたようです。
武士は身体が資本なので、朝からしっかり食事を取るというのは納得です。
対して関西では商人の文化のため、朝の忙しい時間にお米を炊く時間はなく、前日多めに炊いたご飯をお茶漬けにしたりして、簡易的にすませていたようです。
その後、明治時代になりパンが朝食として取り入れられた際に、東京ではご飯がメインなのでパンは小腹を満たすものになり、関西ではパンだと素早く朝食を済ませることができるため、メインの食品として広まったということです。
その考え方から、関東では小腹を満たすためにパンは薄くなり、関西では朝にしっかり食事としてとり込むので切り方も厚くなるという流れです。
こういう考え方で物事を見ると面白いですよね。
それぞれの生活様式に合わせて食品への扱いが違ってくるというのは面白いです。
住んでいる地域で趣向が異なってくるという点
また、違う視点から見ると次のような趣向の違いが原因で厚みが異なっているのではないかという説もありました。
それは「カリカリ」が好きな人と「もちもち」が好きな人の違いによるものです。
パンの食感の好みの問題ですが、関東の人はカリカリ派が多くて、関西の人はもちもち派が多いということのようです。
これは食パンが広まったタイミングで、関東ではパンは甘いもの(銀座であんぱんが人気になって普及したという説)という認識が浸透したので、甘いものを引き立てるカリカリ系のパンが一般的になり、関西では食事としてのパンという概念から、パン自体の味を楽しむために厚くもちもちのパンが一般的になったということのようです。
この説もなるほどと思える内容で非常に面白いです。
実際はそれだけではなく、他の要素も影響しているはずですが、こういう結果になった過程を考える上でその土地の風俗や住んでいる人の特徴が大きく影響していると考えるのは説得力があります。
よくとりだたされる関西と関東の違いも、こういう視点から考察すると非常に面白いですね。